写真=David Marcus氏のXアカウント

LightsparkのDavid Marcus CEOはこのほど、X(旧Twitter)への投稿で、AIエージェントがユーザー操作の中心となる時代には、画面を前提とした既存の決済の仕組みがボトルネックになるとの見方を示した。その上で、リアルタイム決済ネットワークや組み込み型ウォレット、法定通貨の決済網、カードネットワークをAPIで束ねる「ヘッドレスマネー(Headless money)」の必要性を訴えた。

Marcus氏は「The Death of the Interface(インターフェースの死)」と題した投稿で、「アプリやWebサイト、ボタンは消えていく。お金ももはや画面を介して動くものではなくなる」と述べた。

同氏はPayPalのCEOを務めた後、Facebook時代のMetaでステーブルコイン構想「Libra」を主導した経歴を持つ。MetaではAIアシスタント「M」にも関わった。

Marcus氏は、これらの取り組みが十分な成果に結び付かなかった背景について、「着手の時期が早すぎた」と振り返る。「Mは自動化率が30%を超えないまま終了し、Libraは政治的な理由で頓挫した」とした上で、現在は「AIモデルの性能が大きく向上し、Libraのようなステーブルコインも米国と欧州で法制化された」と説明した。

同氏によれば、この40年あまり、人間はメニューやボタンの操作を覚え、コンピュータの言語に合わせてきた。だが今後は、コンピュータの側が人の言葉を理解するようになり、アプリを開いてボタンを押す代わりに、相手に依頼するように話しかけたり入力したりするだけで済むようになるという。

その変化はOSの役割にも及ぶ。Marcus氏は、現在のOSはアプリを起動するための入口だが、今後は利用者が直接やり取りするAIエージェントが、その役割を担うようになるとみる。「市場で勝ち残ったエージェントを握る企業が、この時代で最も強い企業になる」との見方も示した。

こうした世界観で課題として浮上するのが、決済インフラだ。現在の銀行アプリや決済ページ、カード情報の入力欄、SMS認証コードなどは、いずれも画面操作を前提に設計されている。本人認証や不正検知、紛争処理も、人間が途中で介在することを想定している。

しかし、利用者側のAIエージェントが事業者側のAIエージェントから商品やサービスを購入する場面では、決済ページを操作する人も、認証コードを受け取る人も存在しない。Marcus氏は、ステーブルコインだけでこのギャップを埋めるのには限界があると指摘した。

同氏は、ステーブルコインの有用性は、それ単体ではなく、高速な決済ネットワークや組み込み型ウォレット、国内外の法定通貨決済網、カードネットワークと組み合わせることで高まると説明する。

その考え方を集約したのが「ヘッドレスマネー」だ。高速な決済ネットワーク、組み込み型ウォレット、国内外の法定通貨決済網、カードネットワークの4つを、画面なしで利用できるシンプルなAPIで統合し、AIエージェントが必要なタイミングで即座に資金をやり取りできるようにする構想だ。

具体例としてMarcus氏は、「週末までにフェンスを修理する必要がある」と利用者が伝えれば、AIエージェントが施工業者側のエージェントと価格を交渉し、手付金を支払う。さらに完成写真が届けば残金を自動で支払う、といったシナリオを挙げ、こうした取引が現実味を帯びるとした。

企業向けの利用例にも言及した。Marcus氏は「事業者側のエージェントは、30カ国に分散する400人の契約者に対し、毎週金曜日に支払いを実行できなければならない。受取先が銀行口座でもモバイルウォレットでもカードでも、数秒で送金が完了する必要がある」と主張した。

その前提として、24時間稼働のリアルタイム決済と低コストが不可欠だとする。加えて、人間が上限額を設定したうえでエージェントに支出権限を付与できること、必要に応じてその権限を直ちに撤回できること、誤送金が発生した場合に誰が損失を負担するのかを明確にしておくことも要件に挙げた。

Marcus氏はまた、「AIエージェントによるショッピングの第1波が鈍い立ち上がりになった大きな理由は、人間向けの決済手段をそのまま流用したことにある」と指摘。「今回はAIモデルの性能も十分で、法整備も進んだ。足りないのは、エージェントが画面なしで扱えるマネーだ」と強調した。

同氏は、AIエージェント向けの通貨インフラ市場では、企業価値が数千億ドル規模に達する企業が複数現れる可能性があるとの見方も示した。一方で、Lightsparkがこの領域に取り組んでいるため、自身の見方にバイアスがあることも認めた。

Marcus氏は2021年11月にMetaを退社後、ビットコインのレイヤー2技術「Lightning Network」関連のバックエンドインフラを中核事業とするLightsparkを設立した。

Lightsparkは、Lightning Networkを活用しようとする企業や開発者、加盟店向けのバックエンドインフラを開発している。Lightning Networkは、ビットコインを基盤とする少額決済向けのプロトコルで、高速処理に強みを持つ。

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