カナダの職場で、同僚や上司に対し、自身のAI活用度を実際より高く見せる動きが広がっていることが分かった。HRデータ分析企業のVisierによる調査では、回答者の48%が、AIの利用量や習熟度を過大に伝えていると答えた。
米ITメディアTechRadarが12日(現地時間)に報じた。
調査では、AIがすでに業務の進め方や役割に大きな変化を及ぼしているとの認識も示された。回答者の54%は、この2年間でAIが自身の役割を大きく変えたと答えた。一方で、その変化のスピードに企業側の準備や支援が追いついていないとの見方も強い。
職場でのAI活用を求める圧力も無視できない。45%が、職場でAIを使うべきだというプレッシャーを感じていると回答した。AI活用が成果や業務適応力の指標として受け止められるなか、実力以上に使いこなしているように見せようとする傾向が表れている。
企業側の受け入れ体制の不備も明らかになった。32%は「勤務先に明確なAI戦略がない」と回答し、27%はAI戦略の有無自体が分からないとした。経営陣が現場に必要な教育や支援の水準を理解しているとみる回答も、3分の1程度にとどまった。
教育不足は数字にも表れた。十分な教育と支援が提供されていると答えたのは21%にすぎない。従業員が最も求めているのはスキル向上の機会で32%、企業の透明性向上を求める回答も31%と高水準だった。
AIの普及に伴う雇用不安も大きな論点となっている。24%がAIによる失職を懸念していると答えたほか、キャリア形成の機会拡大を求める声も目立った。18%は、AIが自身に与える影響について、より明確な指針が必要だと回答した。
アンドレア・ダーラー博士は、従業員が求めているのは「保護」ではなく「準備」だと指摘した。AIによる変化から守られることよりも、企業としての計画が整備され、十分な説明や案内を受けられることを望んでいるという。現場の不安を和らげるには、技術導入そのものよりも、教育と情報提供を先行させる必要があるとの見方だ。
Visierは、従業員の信頼を得るには教育と透明性を優先すべきだとしている。そうした基盤が整ってこそ、企業が期待する生産性向上も実現しやすくなるとみている。AI導入が加速するなか、競争力を左右するのは技術の採用そのものではなく、それをどう説明し、どう育成につなげるかという組織の実行力になりつつある。