欧州はAIインフラや基盤モデルへの投資で米国に大きく水をあけられている一方、産業別のAI応用ソフト市場では存在感を急速に高めていることが分かった。巨額資金を必要とする基盤モデル開発ではなく、産業現場に特化したソフトウェアに注力する構図が鮮明になっている。
Fintech News Switzerlandが12日付で伝えたところによると、McKinseyと欧州ソフトウェアネットワークのBoardwaveは共同報告書で、欧州が世界のAI応用市場における主要拠点として台頭しているとの見方を示した。
報告書によれば、2025年1月から2026年6月までの世界のAI投資額は8350億ユーロに達した。このうち欧州の比率は10%にとどまり、北米が71%、アジアが16%を占めた。AIプラットフォームとインフラ分野に限ると、欧州の投資規模は米国の4%にとどまった。
一方で、AI応用ソフトでは状況が異なる。欧州の同分野への投資規模は、2018年には米国の11%水準だったが、2026年上半期には44%まで拡大した。投資額も68億ユーロとなり、前年通年の81億ユーロに迫った。
産業特化型AIの伸びはさらに顕著だ。欧州のスタートアップによる資金調達規模は、2018年の米国比9%から、2026年上半期には67%まで上昇した。
投資は、産業・エネルギー・気候、防衛・安全保障、輸送・物流、法務・コンプライアンス、医療・ライフサイエンス、金融・保険の6分野に集中した。
代表例としては、防衛AIのHelsing、法務AIのLegora、自動運転のWayve、ソフトウェア開発プラットフォームのLovableなどがある。これらの企業は創業から平均5年で、欧州テック企業の企業価値上位100社に入った。
報告書は、欧州の研究力や専門人材、大企業との協業エコシステムも成長要因として挙げた。とりわけ2025年には、米国から欧州へ移る技術・AI人材が純流入に転じたという。
その上で報告書は、欧州が基盤モデル競争での劣勢を補うには、産業に関する専門性と複雑な規制環境への理解を強みに、AI応用市場を開拓していく必要があると強調した。