写真=Intel

Intelのリップブー・タン最高経営責任者(CEO)は、中国のオープンウェイトAIモデルを「十分良い」と評価した。米当局が調査対象としている中国のAI研究機関のモデルに公の場で言及したことで、対中規制を巡る政策論と企業の実務判断の隔たりが改めて浮き彫りになった。ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanが12日(現地時間)に報じた。

タンCEOは、シンガポールのDBSが開催したパネルイベントで、DeepSeek、Kimi、GLMに言及し、これらのモデルを「十分良い」と評価した。

あわせて、オープンなAIエコシステムへの支持も強調した。自身を「オープンソースを強く信じている」と表現し、中国の研究機関が手がけるモデルはコスト効率の面でも競争力があると述べた。

その上で、「どのモデルがどの業務に適しているかは市場が決める」とし、採用のスピードも非常に速いとの認識を示した。

こうした発言は、NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの見解とも重なる。フアンCEOは7月、中国のAIが米企業を押しのけるとの懸念を否定した上で、米企業は中国のオープンソースモデルの利用を「絶対的に」認めるべきだと主張していた。当時、中国の研究機関が開発したモデルについても「素晴らしい」と評価している。

一方で、企業側の評価と政策当局の認識には隔たりがある。Intelトップが高く評価したのは、米政府が調査対象としている中国のAI研究機関のモデルだからだ。

米連邦捜査局(FBI)、国家安全保障局(NSA)、サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は9月の共同勧告で、DeepSeekやMoonshot AIのKimi、Z.aiのGLMなどを含む中国企業が、2024年末から米国のモデルに対して大規模な蒸留を行っていたと指摘した。

蒸留は、大規模モデルの出力を学習し、より小型のモデルを訓練する手法で、研究開発の現場では広く使われている。ただ、米政府は中国企業による作業の規模や意図を問題視している。

タンCEOの発言は、こうした調査が続く中で出たものとしても注目を集めている。

オープンウェイトモデルを巡る規制論争も収束していない。NVIDIAは同月、Microsoft、Meta、Hugging Face、Mistralなどとともに、政策当局に対し拙速な規制を避けるよう求める公開書簡に名を連ねた。

この書簡では中国に直接言及していないが、時期的にはトランプ政権とスコット・ベッセント財務長官が禁止措置や制裁を検討しているとの報道と重なっていた。

今回の論争では、Intelと米政府の関係も無視できない。Intelはトランプ政権との取引を通じ、米政府が1株20.47ドルで4億3330万株を取得する形で、89億ドルの出資を受ける方針だ。持ち株比率は9.9%となる。

既存のCHIPS法に基づく補助金を含めると、政府支援の総額は111億ドルに達する。

こうした構図は、米政府とIntelの利害関係を一段と複雑にしている。トランプ氏は、政府がOpenAIとAnthropicの持ち分についても、Intelと同様の方式で保有する可能性に言及している。

OpenAIとAnthropicは、中国による蒸留の問題を強く提起してきた米国のAI企業だ。実現すれば、米政府は中国モデルを高く評価する半導体企業と、それを問題視する米AI企業の双方に利害を持つことになる。

なお、タンCEOはこの日、AIに加えて量子コンピューティングにも言及し、今後3~5年で同分野が主流領域に入る可能性があるとの見方を示した。

ただ、今回の発言で最大の注目点となったのは、米政府が調査対象としている中国のAI研究機関のオープンウェイトモデルを、Intelのトップが公に評価したことだ。対中AI規制を巡る政策判断と、企業の現場で進む実用的な選択のずれが改めて鮮明になった。

キーワード

#Intel #NVIDIA #人工知能 #オープンウェイトモデル #オープンソース #DeepSeek #Kimi #GLM #米国政府 #対中規制
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.