画像はイメージ。ゲーム業界では、労使交渉の争点が賃金や成果給にとどまらず、分社化やM&A、AI導入にも広がっている(画像生成はChatGPT)

ゲーム業界で、労使交渉の争点が賃金や成果給から、分社化やM&A、配置転換、AI導入へと広がっている。従来のように再編後の雇用維持を求めるだけでなく、経営判断の過程でどの段階から情報を開示し、労組と協議するかまで論点が拡大してきた。

こうした変化を象徴するのが、9月30日に発足したWemadeの労働組合だ。労組は、大株主の変更や組織改編に伴う構造調整や整理解雇への反対、成果給制度の改善に加え、主要事業の方向転換に際して事前に労組と協議することを求めた。Wemixを含む主要事業部門の雇用継承と組織維持も要求項目に盛り込んだ。

Wemadeでは現在、大株主の交代に向けた手続きが進んでいる。パク・グァンホ議長は6月、保有株39.33%をNeoplusに売却する契約を結んだ。NeoplusとKingnetなどが参加する投資家コンソーシアムは、9月30日までに取引完了に向けた手続きを進める予定だ。取引が完了すれば、同コンソーシアムがWemade株40.25%を保有する筆頭株主となる。

大株主の交代後は、事業運営や組織の方向性が変わる可能性がある。このため労組の要求も、再編後の雇用維持にとどまらず、再編の意思決定プロセスそのものへと広がっているとの見方が出ている。

雇用を巡る問題は、もともとゲーム業界の労使交渉で重要な論点だった。2018年にNexonとSmilegateで相次いで労組が発足した際も、長時間労働や包括賃金制に加え、プロジェクト中断や組織再編に伴う雇用不安が早い段階から課題として浮上していた。

一方、報酬を巡る対立が後退したわけではない。昨年のNeopleでは、「Dungeon&Fighter Mobile」の中国でのヒットを受け、成果給や収益配分を巡る労使対立が表面化した。労組はゲーム業界で初めてストライキに踏み切り、約5カ月に及んだ対立は、賃上げなどを含む賃金・団体協約の妥結で収束した。

足元の変化は、報酬問題が雇用問題に置き換わったことではない。企業の事業再編プロセスそのものが、労使関係の新たな争点になりつつある点にある。

NCでも2024年、QA部門とITインフラ部門を別法人として分社化する過程で、同様の問題が表面化した。労組は分社対象となる社員の雇用安定を求め、発足後初の集会を開いた。新設法人が将来、廃業や売却に至る場合も見据えた雇用保障策を要求した。

ゲーム業界では、新作やプロジェクトの成否に応じて開発組織が再編されるケースが比較的多い。従来は、プロジェクト終了や組織改編の後に配置転換や雇用をどう担保するかが主な論点だった。だが最近は、事業再編の過程で、いつ情報を開示し、どの段階から労組と協議するのかまで焦点が広がっている。

こうした要求は昨年以降、個別企業の問題を超え、業界共通の課題として具体化し始めた。

化繊食品労組IT委員会は2025年、IT・ゲーム業界向けの共同要求案を初めて策定した。評価基準の開示に加え、経営上の理由による配置転換手続きの改善、分社化や買収、合併といった再編時に労働者の権利を守るための手続き整備を盛り込んだ。

共同要求案では、プロジェクト改編に伴って繰り返される配置転換や、分社化、買収、合併などへの対応手続きの改善を求めた。労組側は、当事者の意思が十分に反映されないまま異動が進んだり、雇用不安が繰り返し生じたりする事例が続いているとして、個社ごとの対応ではなく、業界共通の基準が必要だと説明している。

今年は共同要求案がさらに拡大した。IT委員会は3月、従来の4大共同要求案に週4.5日制を加え、2026年の交渉で提示する方針を決めた。労組側は、主要IT・ゲーム企業が昨年の共同要求案の一部を受け入れたとしているが、どの企業がどの項目を反映したかは明らかにしていない。

制度面でも動きがある。今年施行された改正労働組合及び労働関係調整法は、労働条件に影響する事業・経営上の決定を労働争議の対象に含めた。ただし、合併や分割、売却といった経営判断そのものが直ちに交渉や争議の対象になるわけではない。実行過程で整理解雇や配置転換など、労働条件に実質的な変化が生じる見込みがあるかどうかを踏まえて判断する。

こうした流れを踏まえると、ゲーム業界の労組要求は単に項目が増えたという段階を超えている。プロジェクトや組織変更の後に雇用や報酬を求めるだけでなく、社員に直接影響する変化が決まる前の段階で、情報開示と協議手続きを確保しようとする方向へ進んでいる。

AIも新たな労使課題として浮上している。

4月に共に民主党ゲーム特別委員会と化繊食品労組IT委員会が現場従事者1,078人を対象に実施した調査では、77.3%がAI導入による雇用不安を感じていると答えた。AI導入に伴う収益配分のガイドラインが必要だとする回答も82.3%に達した。一方で、AI転換を巡って企業と労組の公式な議論が行われていると答えた割合は26.7%にとどまった。

AIはすでに現場で使われるツールになっているが、導入が職務内容や人員構成、評価、成果配分にどのような影響を及ぼすかを巡る労使のルールは、なお十分に整っていない。

労組側は、AI導入そのものに反対するのではなく、技術活用に伴う雇用安定、創作者の権利、評価や成果配分の基準を一体で議論すべきだとの立場を示している。化繊食品労組IT委員会がAI転換の過程で労使政の協議体を提案したのも、現場従事者、企業、政府がAIの影響を共同で議論し、基準整備につなげる狙いがあるためだという。

業界関係者は「ゲーム業界では、賃金や成果給、労働時間と並んで雇用安定が主要な労使課題として扱われてきたが、最近は分社化や配置転換、AI導入のように、雇用や業務に影響する経営判断にまで争点が広がっている」と話す。「今後は結果に対する報酬だけでなく、意思決定の過程でどの情報を共有し、どこまで協議するかが重要になる」との見方を示した。

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