Samsung ElectronicsのHBM4製品。写真=Samsung Electronics

Samsung Electronicsが、日本、ベトナム、米国に半導体の研究・後工程・生産拠点を分散する動きを進めている。AI向け半導体需要の拡大でメモリ不足が長期化するなか、顧客の間では価格や性能に加え、安定供給体制を重視する傾向が強まっている。Samsung Electronicsは拠点の地域分散を通じ、代替供給先としての存在感を高める考えだ。

Samsung Electronicsは8日、2026年7〜9月期の営業利益が107兆4000億ウォンとなり、前年同期比780%増だったとの速報値を発表した。収益の大半はメモリ事業が支えた。

ディスプレー、モバイル、家電の各事業が小幅黒字または赤字にとどまり、System LSIとファウンドリも赤字となるなか、メモリの営業利益が半導体部門全体の利益を上回ったとHana Securitiesは分析した。Samsung Electronicsは今後、事業部別の確定値を含む決算を公表する予定だ。

足元の業績を押し上げているのはメモリ価格の上昇だ。その背景には需給逼迫がある。Hana Securitiesによると、7〜9月期のDRAM価格は前期比20%上昇した。長期供給契約を結んでいない顧客は、高値での調達を迫られているという。

同社は、主要DRAMメーカー3社の増設計画を踏まえても、供給不足は2028年まで続く可能性が高いとみている。

こうした状況を受け、これまで半導体を外部調達してきた企業の一部では、自社生産に乗り出す動きも出ている。Hanwha Investment & Securitiesによると、TeslaとSpaceXは、既存のファウンドリやメモリメーカーの増産だけでは必要量を安定確保しにくいと判断し、自社半導体工場「テラファブ」構想を推進している。

顧客側では、必要な量を必要な時期に確保できるかが、供給先選定の重要な基準になっている。

Samsung Electronicsは、研究、テスト、生産をそれぞれ別の国に配置する形で、こうした需要に対応する。いずれも韓国外の拠点だ。日本の横浜では350億円を投じ、先端パッケージング研究拠点(APL)を建設している。

同拠点では、高帯域幅メモリ(HBM)や2.5D・3Dパッケージングなど次世代チップに関する研究を、日本の素材・部品・装置メーカーと共同で進める。ベトナム・タイグエンでは15億ドルを投じ、出荷前検査とパッケージングを担う後工程拠点の整備を進めている。

米テキサス州テイラーでは、米国の半導体法に基づく補助金と連動した先端ファウンドリ生産ラインを建設中だ。ビッグテック顧客が集中する米国内で、チップを直接生産する拠点となる。

これら3拠点は、生産が一地域に偏った供給網を避けたい顧客を主な対象としている。TSMCは先端プロセス生産の大半を台湾に置いている。米国など海外工場の拡充を進めているものの、先端チップ生産の中心が台湾である構図は変わっていない。

そのため、台湾海峡情勢や地震などのリスクが顕在化した場合、顧客のチップ調達全体が揺らぐ可能性がある。

このため、NVIDIAやMicrosoft、Metaなどのビッグテックは、TSMC以外の供給先を模索しているという。AIチップの発注が特定企業に集中すれば、単価上昇や供給遅延につながりかねないためだ。Samsung Electronicsは、研究・テスト・生産を複数地域に分散した体制を打ち出すことで、代替供給先としての競争力を訴求する狙いがあるとみられる。

Samsung Electronicsが拠点分散を加速する背景には、足元のメモリ需給だけでなく、半導体市場の競争構造の変化もある。供給先を巡る競争が激しくなる一方で、新たなチップメーカーも相次いで台頭している。

Hanwha Investment & Securitiesによると、Teslaは今年4月、ギガテキサスで30億ドル規模のリサーチファブの建設に着手した。SpaceXも8月、テキサス州グライムズ郡を大規模テラファブの用地として確定した。第1段階の投資額だけで168億ドルを超えるという。

テラファブは、ロジックとメモリのウエハー製造から先端パッケージング、テストまでを1拠点に集約する構想だ。設計からテストまでを同一ファブ内で反復開発できる点が、従来の委託生産とは異なるとしている。初期生産はIntelの14Aプロセスで始める計画で、Intelもプロジェクト参加を公式に表明した。

Samsung Electronicsがテイラーファブを建設しているテキサスで、需要家自身が生産拠点を構える構図になる。

テラファブの本格量産時期は公式には確定していないが、業界では今後2〜3年後以降に本格生産に入るとの見方が多い。Hanwha Investment & Securitiesは、その間に量産ファブへ投入する装置や工程が固まるとみている。

時期的には、供給不足のピークとされる2028年と重なる。メモリの生産計画が具体化すれば、Samsung Electronicsを含む韓国のメモリ供給網に恩恵が広がる可能性もあるという。

Samsung Electronicsの拠点分散戦略は、供給不足が解消した後に顧客がどの供給先を選ぶかを見据えた布石ともいえる。テラファブが新たな生産主体として台頭するかどうかが、今後の変数になるとの見方もある。

業界関係者は「ビッグテックが半導体ファウンドリを選ぶ際に最も重視するのは、供給網が途切れないことだ」としたうえで、「以前は単価やプロセス技術が重視されたが、いまは必要な時期にチップを100%受け取れる安定稼働力が最優先になっている」と指摘した。

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