AIエージェントがオンライン上で商品やサービスの決済を直接担う動きが広がっている。ただ、取引後の返金や紛争処理を誰が判断し、責任を負うのかという枠組みは整っておらず、普及に向けた課題として浮上している。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが9日付で伝えたところによると、Amazonの「Bedrock AgentCore Payments」は、CoinbaseとStripeの決済インフラを活用し、AIエージェントが有料サービスを探し、認証を経て決済できるようにする。あらかじめ設定した上限の範囲内で、ステーブルコインとx402プロトコルを用いる仕組みという。
もっとも、問題は決済完了後に残る。送金自体が正常に行われたとしても、約束されたサービスが適切に提供されたかどうかは、決済記録だけでは判断できないためだ。
GenLayer FoundationのCEO、エドガス・ネムセ氏は、資金移動の有無は明確に確認できる一方、取引結果が依頼内容に沿っているかどうかは、単純な決済データだけでは判定しにくいと指摘した。
規制当局も責任の所在に目を向けている。オーストラリア準備銀行(RBA)は6日に公表した決済に関する協議の要約で、販売事業者や決済サービス事業者、カード発行会社などの間で、AIエージェントが権限を超えた取引を行った場合の責任分担が不明確だとの懸念が示されたと明らかにした。
決済ネットワーク側が、エージェントの行為が実際に利用者の指示に沿っていたかを確認しにくく、結果として販売事業者の負担が増す可能性があるという。RBAは、AIエージェント経由の購入で4%の追加コストが発生する事例にも触れている。
紛争の申し立てが容易になることも、新たな負担要因になり得る。ネムセ氏は、従来の紛争処理は手続きの煩雑さゆえに、多くの消費者が異議申し立てを断念してきた現実の上に成り立っているとの見方を示した。
その一方で、AIエージェントは低コストでこうした手続きを代行できるため、紛争件数が大幅に増える可能性があると説明した。
苦情対応の負担はすでに拡大している。米消費者金融保護局(CFPB)が受理した苦情件数は、2025年に660万件と前年の2倍に増えた。CFPBは、大規模言語モデル(LLM)や自律型ソフトウェアが、重複する苦情を大量に提出する可能性があるとも警告している。
カード決済の取り消しや返金を求めるチャージバックのコストも重い。Mastercardは、2028年の世界のチャージバック件数が3億2400万件に達すると予測した。
また、2026年の米国の販売事業者におけるチャージバック1件当たりの処理コストは128ドル(約1万9200円)としている。この金額には内部処理費用と外部手数料のみが含まれ、商品やサービスそのものの損失は反映していない。
一方で、小規模な販売事業者にとっては新規顧客を獲得する機会にもなり得る。ネムセ氏は、AIエージェントが広告の露出量ではなく、消費者の要求をどれだけ満たせるかを基準に販売事業者を探せると説明した。
Shopifyも、ブラウザベースのAIショッピングエージェントによる決済を認める方向で動いているという。
足元の主要な決済技術は、購入承認と権限確認に軸足を置いている。Googleの「AP2」、Mastercardの「Agent Pay」、Visaの「Intelligent Commerce」は、署名付きの委任情報、トークン化された認証情報、支出上限、エージェントの本人確認などを活用する。
消費者が何を指示し、どこまで許可したかは立証できても、販売事業者が約束した結果を実際に提供したかどうかを判断する問題は残る。
焦点は決済技術そのものより、むしろ紛争処理の仕組みにある。AIエージェントによる商取引を広げるには、承認段階の自動化だけでなく、履行確認や中立的な紛争解決の枠組み整備が欠かせない。