TikTokのショウ・ジー・チュCEO。写真=Shutterstock

TikTokのショウ・ジー・チュ最高経営責任者(CEO)は、AIが今後2〜3年で科学分野に重要なブレークスルーをもたらす可能性があるとの見方を示した。一方で、自律型AIエージェントの普及が進む中、安全性やガバナンス、セキュリティ対策の強化が重要になると指摘した。CNBCが12日(現地時間)に報じた。

ショウ氏は、シンガポールで開かれた「DBS Asia Future Forward Conference」に登壇し、AIは物理学、バイオテクノロジー、化学、材料科学などで具体的な成果につながる可能性が高いと語った。

同氏は、AIの活用領域は現在広く認識されているサービスの範囲を超えて広がるとみている。科学分野での進展についても、「いまは可能性の入り口に立った段階にすぎない」との認識を示し、進歩のペースは極めて速いと評価した。

こうした発言は、TikTokの親会社であるByteDanceが、AI研究の対象を消費者向けアプリケーションの外へ広げている時期に出た。ByteDanceのSeed研究チームは4月、生体分子構造の予測と設計に焦点を当てたAIモデル「Protenix-v2」を公開している。新薬探索への活用が見込まれている。

その一方で、ショウ氏はAIの性能向上に伴い、管理と安全性の重要性も一段と高まると強調した。AIが科学分野で実際に成果を生み出し始めた後の次の課題は、モデルや機械が人間の倫理基準に沿って機能するよう調整することだと説明した。

セキュリティリスクについても警戒感を示した。利用者が出力内容を十分に理解しないまま、AIエージェントに広い権限を与えてしまう恐れがあるためだ。自律的に購買を行うAIエージェントを例に挙げ、利用者の意図を超えた購入が発生するリスクに言及した。

企業側の負担も増している。高度なAIモデルの普及によって、詐欺やサイバー攻撃を仕掛けるコストが大きく低下しているためだ。ショウ氏は、プラットフォーム企業にはこうした脅威に対応するための適切な防御ツールが必要になると述べた。

こうした流れは、米テック大手のAI投資とも重なる。今月は米政府とMeta、Googleが、細胞の挙動を予測するAIモデルの開発に向け、18億ドル規模のプロジェクトへの参加を発表した。生物学研究や新薬探索の高度化と迅速化を狙った取り組みだ。

ByteDanceによる科学分野向けAIの拡大も、単なるサービス高度化にとどまらない。AIを巡る競争の軸が研究開発領域へ急速に広がる中での動きといえる。

ショウ氏はまた、AIの短期的な効果は過大評価される一方、長期的な潜在力はむしろ過小評価されているとの見方を示した。TikTokの運営では、AIはすでにコンテンツ制作やレコメンド、検索に深く組み込まれている。ByteDanceはこの基盤を生かして科学分野へ適用範囲を広げる一方、自律型AIの拡大に伴うセキュリティとガバナンスの強化という課題にも向き合うことになる。

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