米NHTSAはヘッドライト規制の見直しを通じ、米国市場で認める照明技術の範囲拡大を目指す。写真=Shutterstock

米道路交通安全局(NHTSA)は、自動車ヘッドライトに関する規制の全面的な見直しに乗り出す。対象となるのは、連邦自動車安全基準(FMVSS)のうち車両照明を定める「FMVSS108」で、最新の照明技術を基準に反映するとともに、他車へのグレア抑制も強化する方針だ。

IT系メディアのArs Technicaが10月8日(現地時間)に報じたとおり、NHTSAは、FMVSS108の再構築に向け、関係者との協議を通じたルール見直し手続きに入る予定という。

見直しの狙いは、長年指摘されてきた米国の照明規制の遅れを是正することにある。現行基準では、最新の安全照明技術を十分に取り込めていないとされる。

NHTSAのジョナサン・モリソン氏は、「現行基準が、自動車メーカーによる安全性向上に資する最新照明技術の採用を妨げている」と説明。「専門家や関係者の知見を集約し、基準を現代化すると同時に、眩惑の潜在要因にも対応する」と述べた。さらに、こうした協調的な進め方は、時代遅れの規制の是正や技術革新の促進、道路安全の向上につながるとの考えを示した。

米国のヘッドライト規制は、欧州や日本に比べて保守的だとみられてきた。従来のFMVSSは実質的にハイビームとロービームを前提としており、それ以外の適応型ヘッドライト技術は制度に十分反映されてこなかった。

一方、照明技術は大きく進化している。レーザーやLEDの発展を背景に、光を精密に制御する方式が広がり、個々のピクセルを制御して対向車に当たる部分だけを遮光する技術も普及した。ただ、米国では制度上の制約から導入が進みにくかった。

規制見直しの議論自体は新しくない。2013年にToyotaの請願を受けて、NHTSAは規則策定手続きに着手する方針を示したが、検討用の規定案が示されるまでにはさらに約5年を要した。

当時のNHTSAは欧州基準の採用も検討したが、交差点やカーブなどで他車両の検知が遅れた場合、走行ビームの配光変更が間に合わない可能性があると判断した。

背景には、米国と欧州で異なる規制の枠組みもある。欧州では当局が試験を経て販売を認める型式認証を採るのに対し、米国では自動車メーカーがFMVSSへの適合を自己認証し、不適合が判明した場合に制裁の対象となる。

NHTSAは、この自己認証の仕組みでは、欧州式のグレア試験が過度に主観的になり得るとみて、別の基準を整備する方向を選んだ。

制度改正は2022年にも一度実現している。最終規定の整備を経て、米国でもアクティブビームのマトリクスLEDヘッドライトを搭載した車両の販売が始まった。

ただ、同じ技術でも欧州仕様に比べて機能が制限された例があった。代表例として、Audiの大型SUVが挙げられている。

今回NHTSAが示した見直しの方向性は、これまでより広範だ。米国基準をグローバル基準と調和させつつ、LED、周辺光センサー、自動ハイビーム、交換式光源などを規定に反映することを視野に入れる。

あわせて、レンズや光学部品の試験手順の見直しや、ヘッドライトの照射角をより正確に調整する手法も検討対象とする。新技術の導入を広げる一方で、他のドライバーの視界を妨げないよう、グレア抑制基準も強化する方針だ。

手続きが完了すれば、米国の車両照明規制は、最新のハードウェアや制御技術をより広く受け入れる方向へ進む可能性がある。自動車メーカーにとっては、米国仕様向けに制限してきた照明機能の設計見直しを迫られる可能性もある。

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