Sonyの家庭用ゲーム機「PlayStation 5(PS5)」が、世代後半に入っても値下がりせず、むしろ価格を切り上げている。Engadgetが11日、こうした動向を報じた。
PS5のデジタル・エディションは、2020年の発売時に399ドルだった価格が、2026年には599ドルへ上昇した。6年間で200ドルの値上げとなる。ディスク・エディションも499ドルから649ドルに上がった。
ゲーム機市場では、発売から数年が経過すると、値下げやバンドル販売、販促キャンペーンが広がるのが一般的だ。PS5はこうした流れに逆行する形となっている。
なかでも値上げ幅が大きいのがデジタル・エディションだ。ディスク・エディションも同じ期間に約30%上昇した。
Sonyは2023年、PS5のスリムモデルを投入し、製品構成を一部見直した。デジタル・エディションの価格は449ドルに引き上げられた一方、ディスク・エディションは500ドルを維持した。
ただ、性能面での上積みはなかった。本体と内部部品を小型化し、ストレージ容量は当初の825GBから1TBに拡大した。その後、2025年末にはスリムのデジタルモデルのストレージを再び825GBに戻した。
値上げは2段階で実施された。2025年8月に各モデルを50ドル引き上げ、2026年4月にはさらに100ドル上乗せした。
この結果、足元の推奨小売価格は、ディスク・エディションが650ドル、デジタル・エディションが600ドル前後となった。PS5 Proも2024年に700ドルで発売された後、2025年8月に50ドル、2026年4月にも追加で値上げされ、900ドルまで上昇した。
Engadgetは、足元の価格水準はインフレだけでは説明しきれないと指摘する。2020年に399ドルだったデジタル・エディションを現在の物価水準に換算すると514.9ドル程度だが、実際の販売価格は599ドルに達しているという。
一方、ディスク・エディションは、2020年の499ドルが現在の物価水準では約644ドルに相当し、現行価格との差は比較的小さいとしている。
背景には、業界全体で進むNANDフラッシュとDRAMの需給逼迫がある。AI向け需要の拡大で、高性能メモリを大量に必要とするデータセンター事業者が供給を優先的に確保したことに加え、最先端のDRAMやNANDを生産できる工場が限られているため、ノートPCやゲーム機など民生機器向けの供給が細っているという。
Sonyもこの点に言及している。2025年第4四半期の投資家説明会で、メモリ価格の上昇がPS5の部材コストと製造コストを押し上げていると説明した。
同時に、2026年末までは生産能力に見合うメモリ供給を確保したとも説明した。需給逼迫は2027年まで続くと見込んでおり、次世代ゲーム機にも影響が及ぶ可能性を示唆した。
Sonyのゲーム機事業は、本体販売そのもので大きな利益を稼ぐのではなく、ソフト販売や周辺機器、サブスクリプションで収益を積み上げる構造が一般的とされる。
同社はPlayStation Storeでのゲーム販売やダウンロードコンテンツ、その他取引から手数料収入を得ている。PlayStation Plusの料金も引き上げられており、本体価格を抑えてサービス収入で回収する従来型のモデルが、PS5では以前ほど機能していない実態がうかがえる。
こうしたなか、Sonyは2028年にゲームディスクの提供を終了する計画も持つ。デジタル販売比率の上昇は中長期的にプラットフォーム収益性を高める可能性がある半面、足元では本体価格とサブスクリプション費用の双方が利用者の負担増につながる構図となっている。
今後の価格動向は、メモリの需給次第との見方がある。メモリ価格が下がれば、小売店による値引きやバンドル販売が先行し、その後に推奨小売価格の見直しにつながる可能性があるという。
もっとも、PS5の需要は堅調だ。「Grand Theft Auto 6(GTA 6)」の発売を控え、特にPS5 Proへの需要が強いことから、当面は高値圏での推移が続く可能性が高いとみられている。