TRON創業者のジャスティン・サン氏。写真=Reve AI

TRONが耐量子暗号のテストネット運用を始めた。創業者のジャスティン・サン氏は、必要に応じてメインネットにも耐量子対応を展開できる準備が整っていると明らかにした。

10月10日、ブロックチェーンメディアのCointelegraphによると、サン氏はX(旧Twitter)への投稿で、TRONの耐量子暗号がすでにテストネットで稼働していると説明した。その上で、量子コンピューターと人工知能(AI)の進展を注視しており、メインネットへの導入にもいつでも対応できるとの認識を示した。

サン氏は、利用者資産の保護を重視する姿勢も強調した。TRONは、量子コンピューターが現在の暗号方式を破る水準に達する「Q-Day」より前に、耐量子対応を備える数少ない主要ブロックチェーンの1つになるとの見方を示している。

今回の発表で注目されるのは、TRONが研究段階にとどまらず、試験運用の段階に入った点だ。テストネットでの運用は、メインネットへの反映に先立って、技術の安定性や実運用上の課題を検証するためのものだ。サン氏の発言どおりであれば、必要時にはメインネットへの展開を迅速に進められる体制が整いつつあることになる。

こうした動きは、ブロックチェーン業界全体の課題とも重なる。開発者の間では、高性能な量子コンピューターが実用化された場合、ビットコインやイーサリアムを含む多くのブロックチェーンで使われている楕円曲線暗号が脅かされる可能性が指摘されている。このため主要プロジェクトでは、アカウント構造やウォレットの保護を耐量子方式へ移行する方策の検討が進んでいる。

実際、2026年に入ってからはビットコインやイーサリアムの周辺でも具体策が打ち出されている。Strategy主導のコンソーシアムは、ビットコインの量子耐性に関する研究に1500万ドル(約23億円)を支援する方針を示した。Ethereum Foundationは、アカウントを耐量子暗号へ移行する提案を公開し、Algorandも2027年までに耐量子アカウントを導入する計画を打ち出している。

ウォレットセキュリティの分野でも新たな試みが出ている。ブロックチェーンセキュリティ企業のAmerican Fortressは7月、既存のウォレットアドレスを変えずに将来の量子攻撃に備える暗号設計案を公表した。利用者が資金移動や鍵の交換を行わなくても保護を追加できる点を特徴としている。ただ、この提案は暗号関連の論文リポジトリで技術文書として公開された段階で、査読はまだ受けていない。

TRONの今回の発表は、業界全体で進む耐量子対応の流れの中で、メインネットへの実装時期を前倒しできる可能性を示すものといえる。一方で、現時点で確認できるのはテストネットでの稼働と、メインネット移行に向けた準備に関する説明までだ。今後は、実際の導入時期や適用範囲、既存の利用者資産やアカウント構造への影響が焦点になりそうだ。

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