写真=サティア・ナデラ氏のXアカウントより

Microsoftのサティア・ナデラCEOは、AIエージェントの普及によって、ERPやCRMのような企業の中核システムを見直す機運が高まるとの考えを示した。単に既存システムの上にAI体験を重ねるのではなく、AIエージェント時代を前提にSystem of Recordそのものを再設計すべきだという。

ナデラCEOはこのほど、X(旧Twitter)に投稿した「The Infinite SaaS Factory」と題する文章で、「人工知能は、私たちがソフトウェアに合わせて働く世界から、ソフトウェアが仕事に合わせて動く世界へと変えつつある」と述べた。

同氏によれば、企業の業務ユーザーはいまなお複数のアプリを行き来しながら状況を確認し、アプリごとに決められた手順に沿って処理を入力する作業に多くの時間を費やしている。

こうした働き方は、すでにAIによって変わり始めているという。ナデラCEOは、その変化が最も早く表れた領域として、早い段階から大規模にエージェントを導入してきたソフトウェア開発を挙げた。

エージェント開発の拡大に伴い、GitHubではリポジトリ作成やプルリクエスト(PR)、コミットといった活動が急増しているとした。

一方で、エージェントが増えてもSystem of Recordの重要性が薄れるわけではないとも強調した。ここでいうSystem of Recordは、CRMやERPのように企業の基幹データを保持するシステムを指す。

ナデラCEOは、情報を管理し、変更を調整する信頼できる基盤の重要性はむしろ高まると指摘。こうした流れは、営業、カスタマーサービス、財務、オペレーションでも同様に起きているとの認識を示した。

Microsoftは、「ソフトウェアが仕事に合わせて動く」世界を見据え、フロントエンドとバックエンドの両面で取り組みを進めている。ユーザーが直接触れるフロントはCopilotが担う。

同社は、利用するAIモデルや端末、業務の種類を問わず、Copilotを通じて処理できる環境の実現を目指している。ナデラCEOはこれを「仕事のための新しいOS」と表現した。

その下のレイヤーには、これまで個別アプリに閉じていた業務ルールや文脈を、エージェントが利用できる形で外部化した「headless」が位置付けられる。CopilotとheadlessはMicrosoft IQで接続されるとした。

ナデラCEOは、「モデルの知能は、正しい文脈と実行ツールがあって初めて企業で役立つ」と説明した。既存APIをLLMに開放するだけでなく、業務文脈そのものをAIに合わせて設計し直す必要があるという考えだ。

Microsoftは最近、Dynamics 365のSales、Service、Customer Insightsに30超のCopilotスキルを追加した。加えて、Copilotで作成したプログラムを企業システム内でIT部門の統制下に安全に実行できる「Microsoft Copilot Managed Runtime」も投入した。

ナデラCEOは、こうした新たなスキル群と実行環境を組み合わせることで、「The Infinite SaaS Factory」を現実のものにできるとした。

さらに、「Copilot Codeで必要な機能を自然言語で指示すれば、カスタム機能や新たなSaaSモジュールを作成できる」と説明。「それぞれの働き方に合わせてアプリを作り替えて使う、本当の意味での『パーソナル』ソフトウェアの時代が開く」と述べた。

あわせて、そうして作成したアプリも既存のSystem of Recordと接続されるため、従業員ごとに中核データが分散することはないとした。

ナデラCEOはまた、あらゆる仕事をLLMに任せるべきだと主張しているわけではないと強調した。知能が価値を生む部分にだけトークンを使い、実行そのものは、より高速で低コストかつ信頼性の高い既存ソフトウェアに委ねるべきだと述べた。

そのうえで、「System of Recordの上に新しい体験を載せるだけでなく、AIエージェント時代に合わせてSystem of Record自体を作り直す機会でもある」と指摘。「既存システムを改修して使う企業もあれば、全面的に置き換える企業も出てくるだろう」と語った。

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